主人が26年ぶりに高校生になると言い出しました

こんにちは。これは退学 Advent Calendar 2015 12/21の記事です。

お前だれよ?

東銀座にあるイベント会社でエンジニアをやっているおっさんです。妻子が一人ずついます。

高校中退からフリーター、自営業とふらふらして過ごしていたらゲーム会社に拾われ、そこでプログラミングの技術を身につけ、以来ソフトウェアエンジニアとして生計を立てています。ここ数年は主にRubyを書いています。

退学の経緯

都立高校に入学したのですが、うっかり体育会系の気風が強いところを選んでしまい(もともとは旧制中学で男子校だったらしい)、毎日の通学をとても苦痛に感じていました。ギリギリの出席日数を常に計算し、計画的にサボる、という戦略で2年生には進級できたのですが、必要出席数の計算をしくじり、3年生への進級には失敗してしまいました。留年が確定した瞬間退学届けを出すというのは、高校中退ではよくあるパターンだと思います。

その後の人生

フリーターとしていろんなバイトをしました。一番長かったのは家電店の店員。当時はエアコンの取り付けもできましたし、今でもCSアンテナを取り付けたり蛇口を交換したりはできます。

ちょっとした家庭の事情でバイトを辞め、実家のスネをかじりながら儲からない自営業をやったりもしました。ちょうどWindows95が発売され、「これからはインターネットだろう」とISDNのテレホーダイで接続し、それ以来どっぷりネットに依存しています。

ネット中毒の自営業者をやっていたら、家庭用ゲームを開発するソフトハウスの人と知り合いました。「自営業だって?コンピュータとかネット使えるんでしょ?ちょっと手伝わない?」ということで業務委託としてゲーム作りに参加し、気がついたら正社員になり、そのまま8年ちょっと開発をしていました。

ゲームを作る仕事は楽しかったのですが、とにかく収入が低い。そんなタイミングで今のヨメさんと結婚することになり、収入のために転職を決意しました。その後はジョブホッパーとして数社を転々とし、去年の9月から現職にいます。

26年ぶりの高校入学

さて、こんなおっさんがなぜ高校生に?それは、現職に来てから担当している仕事の、ドッグフーディングをするためです。

今年になって部署が変わり、新しい仕事をいくつか担当することになりました。その一つが、ネットの高校こと「N高校」です。

普通科の高校をすでに卒業していると入学することはできませんが、僕は高校を中退したあと大検(現在の高認)を取得したので、入学資格があります。自分の担当するサービスを自分で使うのは、いいサービスにするための基本中の基本。ちょうど資格もあることだし、ひとつ入学してみるか。そんな感じで願書を出したところ合格通知が届き、このまま順調にいけば来年4月から高校生になります。

あの当時必要だったものがここにある

N高の特徴は、ざっくり以下の通りです。

  • 高卒の資格は最短で取得しよう
  • 浮いた時間で好きなことをしよう
  • そのために課外授業や職業体験を提供します

これがどんなにすごいことか。キャリアを回り道しまくった僕があの当時必要としていたものが、すべてここにあるのです。

もう少し掘り下げてみましょう。

高卒の資格は最短で取得しよう

授業はすべてオンライン。自分のペースで好きな時に好きなだけ受けることができます。指導要領による規定(3年間在籍で74単位の取得が必要、年間30単位まで)さえ満たせば、学校生活に関わる時間はすべて自分でコントロールできます。

浮いた時間で好きなことをしよう

僕が高校生の頃はバンド活動に夢中で、68040のMacで打ち込みをしたりしていました。深夜から早朝にスタジオでリハーサルをし(深夜パックは安い)、朝そのまま登校し、授業中は基本寝ている。通信制なら、そんな生活をしなくてもよかったのです。

そのために課外授業や職業体験を提供します

ここがいちばんすごいところです。将来の職業を決める上で、自分にどんな適性があるかを知るには体験してみるのが一番です。僕の場合は小中学校のときBASICでプログラミングをしていたのですが、その後ゲーム会社に拾われるまでプログラミングをすることはほとんどなく、その結果自分の適性に気づくまで随分長い時間がかかってしまいました。

ところが、N高校で提供される各種授業や職業体験があれば、そんな回り道をしなくてすんだかもしれません。ああ、あのときプログラミング授業を受けることができていたら…!

ムスコさんの第一志望がN高校になる日を目指して

などと考えてみたら、17歳の高校中退から34歳の結婚まで17年かかったあれこれを3年間で済ませられる可能性すらある、ということに気がついてしまいました。ドッグフーディングとかネタとしておいしいとか、わりと軽い気持ちで出願してみたのですが、なんだかすごいことになっちゃったぞ、と気を引き締めています。

うちの長男は来月5歳。もう10年したら、高校入学を検討する年齢になります。そのとき彼が第一志望にできるような、親としてうんと言えるような、そんな学校に育てていこう、と思って仕事に取り組んでいます。

ネットの高校、N高校。来年4月開校予定(設置認可申請中)です。開発者として、生徒として、楽しみにしています。